遺言

■遺言書の種類(公正証書遺言と自筆証書遺言)

遺言書には主に公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言がありますが、通常よく目にするのは公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらかとなります。

​まず、公正証書遺言とは、公証役場で公証人が本人に内容を確認しながら作成し、もしくは公証人に自宅もしくは施設まで来てもらい遺言書を作成します。

遺言書の原本は公証役場にて保管されますので、紛失の心配はなく、法的にも問題のない遺言書が作成されます。

遺言者には遺言書の正本及び謄本が渡され、死亡後はその遺言に基づいて、遺言執行者が選ばれている場合は遺言執行者が、選ばれていない場合は相続人が相続手続きを行います。

一方、自筆証書遺言は遺言者本人が自分の手で作成する遺言書となり、民法には次のように規定されています。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 (省略)

つまり、パソコンで作成したものは不可(財産目録等はパソコン作成でも可)、日付のないものは不可、”1月吉日”の記載は不可、訂正するために修正テープを使っている場合は不可、不動産の記載方法が間違っていたら不可となります。

一方、令和3年の誕生日と記載されていれば日付が特定されるので有効、署名にペンネームや芸名を使っていても特定が出来れば有効、印鑑は押されているが実印ではなく100均で買ったと思われる印鑑でも有効となります。

様々な制約がありますので、せっかく書いた遺言書でも要件を満たしていなければ、その遺言書は無効となってしまいますのでお気を付けください。

■公正証書遺言と自筆証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言と自筆証書遺言の一番の違いとしては、まず費用があげられます。

公正証書遺言の作成には公証人の費用であったり、遺言作成時に証人が2人必要となりますので、その証人の費用が必要となります。

公証人の費用は遺言者の財産の価額によって定められます。

詳細は日本公証人連合会に記載されております。

「Q7.公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらい掛かるのですか。」(日本公証人連合会)

一方、自筆証書遺言の場合は自らが作成しますので費用は一切かかりません。

また、遺言書の内容の修正も自筆証書遺言であれば容易に行うことが出来ます。

しかし、自筆証書遺言の場合は、上記で記載したように遺言書の内容が正しくなければ遺言書は無効となってしまいます。

また、公正証書遺言と自筆証書遺言の決定的な違いは、自筆証書遺言は遺言者の死亡後に”検認”の手続きを経なければいけないという点があります。

■遺言書の検認

自筆証書遺言を作成していた方が亡くなった場合、相続人は家庭裁判所にて検認手続きを経なければいけません。

検認手続きとは、家庭裁判所に申立人及び出席可能な相続人が集まり、裁判官の前で遺言書の内容を明確にする手続きであり、この手続きを経なければ、不動産や預貯金の名義変更を行うことは出来ません。

検認手続きを行うには、以下の書類が必要となります。

・遺言者の出生から死亡時までの戸籍一式

・相続人全員の戸籍謄本

・遺言者の子で先に亡くなっている方がいる場合は、子の出生から死亡までの戸籍一式

(・相続人が直系尊属の場合は、相続人以外の直系尊属の死亡が確認出来る戸籍)

(・相続人が配偶者のみ、または兄弟姉妹の場合は、遺言者の父母の出生から死亡までの戸籍一式、直系尊属の死亡の記載がある戸籍、兄弟姉妹で死亡している方がいる場合はその方の出生から死亡までの戸籍一式)

家庭裁判所に申立書と上記の書類を揃え、検認の申し立てを行うと、後日家庭裁判所にて検認の手続きが行われます。

戸籍の取得から裁判所での検認手続き終了まで約1~3か月ほどかかる可能性があります。

一方、公正証書遺言の場合は、遺言作成者が死亡した後は検認の手続きを経ることなく、不動産や預貯金の名義変更手続きにとりかかることが可能となります。

ご自身の死亡後に相続人の負担を減らしたいと考えて自筆証書遺言を作成していたが、結果的に相続人の負担が増えてしまったということにもなりかねないことから、当事務所では公正証書遺言の作成をお勧めしております。